日本労働弁護団 新型コロナウイルス労働問題 派遣編
13派遣
- 有期派遣労働契約の契約期間中に解雇された場合、期間満了までの賃金を派遣元事業主に請求することができます。
- 有期派遣労働契約の契約期間満了後に更新をされなかった場合、契約更新を求めて粘り強く交渉しましょう。派遣元事業主に対して雇用安定措置を取ることを求めることができます。
- 有期派遣労働契約の派遣労働者は、派遣元事業主・派遣先の労働者との間の不合理な待遇の是正を要求できます。
A.
有期の(期間の定めのある)派遣労働契約の場合、「やむを得ない事由がある場合でなければ、」契約期間途中に解雇することはできません(労働契約法17条1項)。この「やむを得ない事由」は正社員に対する通常の解雇(労働契約法16条)よりも厳格な要件だと解されています。期間の定めのない雇用契約とは異なり、有期雇用契約の期間の定めは、その期間は原則として雇用を保障するという趣旨であり、余程のことがない限り、解雇することはできません。契約期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような特別の重大な事由が必要であるということです。単に「新型コロナの影響で会社の経営が厳しくなった、人がいらなくなった」とか「仕事が少なくなった」などという理由では、契約期間途中の解雇は認められません。
A.
有期の派遣労働契約の場合、仮に同じ派遣先での就労で派遣労働契約を反復更新していたとしても、労働契約法19条の雇止め濫用法理が適用されて雇用が維持されるかというと、現在の裁判所の判断では厳しいものがあります。しかし、派遣労働者や労働組合としては、新型コロナの影響があるというだけで「派遣切り」が許されていいということにはならないので、雇用調整助成金等の制度を利用しながら雇用をつなぐように粘り強く交渉していきましょう。
「特定有期雇用派遣労働者等」に該当する派遣労働者に対しては、派遣元事業主は「雇用安定措置」を取るべき努力義務や措置義務がありますので(労働者派遣法30条1項各号ないし2項、派遣規則25条等)、それを利用して交渉しましょう。
㋐特定有期雇用派遣労働者とは、「同一の組織単位の業務に1年以上派遣される見込みがあり、派遣終了後も継続就業を希望している者」をいい、㋑派遣元事業主での雇用通算期間が1年以上の有期雇用派遣労働者(登録状態にある者も含まれる)も㋐と合わせて「特定有期雇用派遣労働者等」といいます。
派遣元事業主は、㋐の特定有期雇用派遣労働者に対して、次の4つの雇用安定措置を取るべき努力義務が課せられています(労働者派遣法30条1項各号)。すなわち、①派遣先に対する直接雇用の依頼(1号)、①を求めても直接雇用されない場合でも、②新たな派遣先の提供(2号)、③派遣元事業主での直接無期雇用(3号)、その他の雇用安定を図るため必要な措置(4号)(例えば、新たな就業の機会を提供できるまでの有給の教育訓練や紹介予定派遣(職業紹介事業者の場合)等)を求めることができます。
そして、上記㋑の派遣労働者に対しては、派遣元事業主は雇用安定措置のうち①・③・④の措置を取るべき努力義務があります。
さらに、㋐の特定有期雇用派遣労働者の中で、「同一の組織単位の業務について3年間従事する見込みがある者」については、上記4つの雇用安定措置を講じるべき措置義務があります(労働者派遣法30条2項、派遣規則25条の2第2項)。
また、派遣先にも、「同一の組織単位の業務に同一の派遣労働者を1年以上受け入れたときは、」派遣期間経過後も同一の業務のために労働者を雇用するときは、当該派遣労働者を遅滞なく雇用する努力義務があり(労働者派遣法40条の4)、その事業所で通常の労働者(正社員)を募集するときは、それを当該派遣労働者に周知しなければなりません(同法40条の5第1項)。
A.
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート有期法)8条(旧労働契約法20条、旧パートタイム労働法8条)及び労働者派遣法30条の3第1項は、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間、派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間の不合理な労働条件の相違をそれぞれ禁止しています。派遣元事業主の正社員が認められている子どもの面倒を見るための特別な休暇は、労働者が経済的に困ることなく子の世話をできるようにするという趣旨・目的で付与されるものですから、有期雇用派遣労働者と正社員とで異なる扱いをする合理的な理由を見出すことは困難です。
また、テレワークや時差出勤にしても、できるだけ通勤や事業場での就労による感染を予防して労働者の生命・健康を守るという趣旨・目的で行われるものですから、正社員も非正規雇用労働者も違いはありません。派遣労働者にだけ時差出勤を認めないのは違法ですし、派遣労働者が派遣元事業主や派遣先の正社員と同じようにテレワーク(自宅勤務)が可能な業務についているにもかかわらず、派遣労働者にだけ認めないのは合理的な理由がなければ違法となります(パート・有期法8条、改正労働者派遣法30の3第1項)。したがって、派遣元事業主に対して、正社員と同様の扱いをするよう求めることができるといえます。