第425回東京地方最低賃金審議会を傍聴。今年の最賃は?
2022年最低賃金はどうなる?
地域間格差
この間、A~Dランク別の引き上げ答申により、地域間格差は拡大。このことが各県での中央答申への上乗せ決定につながっています。全国一律最賃が、英・独・仏・伊・韓国など世界的には主流で、米でもバイデン政権は連邦最低賃金時給15ドル(約1600円)への引上げを図っています。2022年最賃の論議の重要なポイントで、中央最低賃金審議会もおりから5年に一度の見直し時期にあたることから、このランク別制度の見直しを行うはずでした。2022年に向けては、現行の6段階の給地別生活保護基準の見直しも行われる予定であり、現行8段階の地域別介護保険介護報酬も問題を指摘されています。しかしこの最低賃金のA~Dランクの見直し検討は、突然2月に2022年度以降に先送りされました。
全国最低賃金引上げキャンペーンは、2月7日厚生労働省へ申し入れと懇談を行いましたが(要請書↓)、突然のこの先送りは、2021中央最賃審議会の「異例の採決要求」、経営側の強い反発の「後始末」で兼用が行われなかったためと判明しました。
『目安全員協議会の結論を「令和3年度中にまとめる」とされていたのが、突如として「令和4年度中にとりまとめるという変更」が提案されたことに抗議しました。とりまとめ延期の原因が、昨年の目安小委員会と本審で「引き上げを採決した」ことへの使用者委員からの異議に「けじめをつけた(つけるため)」というのに驚かされました。』 同キャンペーンHPより
したがって、このままなら、中央最賃審議会の論議は従来どうりの枠組みでスタートすることになります。
最低賃金額の根拠
最低賃金法9条2項で、最低賃金の決定根拠として 「生計費」 「賃金」「支払能力」の3 要素が規定されています。
生計費 については、2008年改正された最低賃金法9条3項でも、「労働者の生計費を考慮するに当たっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」とされています。しかし生活保護基準との比較でも、働いてえる賃金であるからには、「勤労控除」を反映すべき、税・社会保険料などが十分反映されていない、などの問題点があります。またそもそも「若年単身世帯」をベースにしての比較は、実態として最低賃金近傍で働く「片親世帯」が多いことを無視している。最低賃金水準の決定にあたり考慮すべき要素として、「労働者と家族の必要」とあるILO131号条約及び135号勧告の趣旨に合致していないといえます。最低賃金と生活保護との比較算定方法の問題点と改善方法2010.5
賃金 については、中央でも地方各都府県でも、春闘賃上げ状況や初任給改定状況の調査が行われています。しかし、東京春闘共闘会議(以下、東京春闘)が 2004 年より実施している最賃改定後のパート・アルバイト募集賃金調査の結果では、最低賃金との差が年々ちぢまっている結果が出ています。最賃アップの結果賃金が上昇する状況なのです。
東京地評「東京都パート・アルバイト募集時給調査」結果からみえること2021.12
そもそも同一チェーンのハンバーガー店で同じ職務・待遇で労働していて、なぜ時給だけは勤務地によって違うのか? 同一労働同一賃金ではないし、「田舎の方が生活費やすい」といっても勤務地基準の最賃のため、県を超えての越境労働が増えています。また各都道府県の最賃論議のもとの県内賃金調査も???。最賃が低いから県全体の賃金が低くなる、地場産業より全国チェーン化がすすむ地方の雇用情勢からしても、多くの国と同様、全国一律最低賃金での賃金水準反映が必要です。
支払能力
コロナ禍でも上がり続けた各国の最低賃金
2021年6月、事務局=厚生労働省から、中央最低賃金審議会に資料として出された「案」。
もとは「資料シリーズNo.239 コロナ禍における諸外国の最低賃金引き上げ状況に関する調査―イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、韓国―」( 2021 年 6 月. 独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
各国の最賃202107厚労省資料000784658まずは、英・仏・独・韓国は全国一律最低賃金。「アメリカは、全国一律の連邦最低賃金と地域別最低賃金(州・市・郡)が併存している。」しかし下図のようにほとんどの州が連邦最賃かそれ以上であることを明らかにしている。
そのうえでp2の「各国最賃額」をその後の引上げを含めまとめると以下のようになる。
独法定最賃の推移 2015-2022.10 47688bb15011dc93_33247649
各国の最低賃金、最新状況を集計してみた(2020.4)
2022各国の最賃はしもと作PDF
2020年OECD各国の最低賃金
最低賃金ランキング(年収換算)のトップ10
■1位:ルクセンブルク(26,908.7ドル)
■2位:オーストラリア(25,464.6ドル)
■3位:オランダ(25,454.5ドル)
■4位:ニュージーランド(24,555.1ドル)
■5位:ドイツ(24,435.1ドル)
■6位:ベルギー(23,139.6ドル)
■7位:イギリス(23,044.9ドル)
■8位:フランス(22,206.5ドル)
■9位:韓国(22,206.5ドル)
■10位:アイルランド(21,526.2ドル)
最低賃金ランキング(時給換算)のトップ10
■1位:オーストラリア(12.9ドル)
■2位:ルクセンブルク(12.6ドル)
■3位:フランス(12.2ドル)
■4位:ドイツ(12.0ドル)
■5位:ニュージーランド(11.8ドル)
■6位:オランダ(11.3ドル)
■7位:ベルギー(11.2ドル)
■8位:イギリス(11.1ドル)
■9位:カナダ(10.5ドル)
■10位:アイルランド(10.3ドル)
平均年収ランキングのトップ10
■1位:アメリカ(69,392ドル)
■2位:アイスランド(67,488ドル)
■3位:ルクセンブルク(65,884ドル)
■4位:スイス(64,824ドル)
■5位:オランダ(58,828ドル)
■6位:デンマーク(58,430ドル)
■7位:ノルウェー(55,780ドル)
■8位:カナダ(55,342ドル)
■9位:ベルギー(54,327ドル)
■10位:ドイツ(53,745ドル)
最低年収ランキング
■14位:日本(16,989.5ドル)
最低時給ランキング
■14位:日本(8.2ドル)
平均年収ランキング
■22位:日本(38,515ドル)